保護観察について(少年事件)

2015-06-06

 

1 保護観察とは何ですか。

 少年事件の保護観察について説明していきます。なお,保護観察の一般的な説明については,少年事件に強い弁護士 のQ&Aのコーナーもご参照ください。 

 保護観察とは,少年を施設(要するに少年院等のことです。)に収容することなく,社会の中で普通に生活をさせながら,改善更生をさせるために働きかけを行うという処分です。少年院に生かせたくない!という希望がある場合,少年審判の中で,保護観察の処分を獲得することが一つの目標になります。

2 保護観察の種類にはどのようなものがありますか。

 保護観察の種類には,以下のものがあります。

1号観察

少年法24条1項1号の保護処分に付されているもの

更生保護法48条1号

2号観察

少年院からの仮退院を許されて更生保護法42条において準用する同法40条の規定により保護観察に付されている者

更生保護法48条3号

3号観察

仮釈放を許されて更生保護法40条の規定により保護観察により付されている者

更生保護法48条4号

4号観察

刑法25条の2第1項の規定により保護観察に付されているもの

更生保護法48条4号

3 保護観察は誰が実施するのですか。

(1) 保護観察官と保護司について

 保護観察は,少年の居住地の保護観察所が中心となっておこないます(更生保護法60条)。

 実際に,保護観察で少年に指導監督・補導援護を行うのは,保護観察官または保護司と呼ばれる人たちです(更生保護法61条1項)。保護観察所の所長が,少年を担当する保護観察官及び保護司を指名します。

 保護観察官は,保護観察所等の専従の職員です。保護司は,いわゆる有識者で,非常勤・無給の国家公務員です。当然,守秘義務も課されます。

(2) 保護観察官と保護司が決まるまでの流れ

 東京家庭裁判所で保護観察の決定が出ますと,家庭裁判所庁舎内(2階)の東京保護観察所分室へ行くように指示されます。その分室で,保護観察について簡単に説明を受けたのあと,法務省中央合同庁舎内にある東京保護観察所(裁判所の隣の建物です。)へ出頭するように指示されます。そこに行くと,担当となる保護観察官が決まっていて,担当の保護観察官との面接があります。また,その面接の際に,担当の保護司が決まります。

 その後は,保護司が,少年と実際に接触をしていき,保護観察官は前面にはでないことが多いです。もっとも,処遇が困難な少年の場合には,保護観察官が直接担当する「直担」という制度もあります。

(3) 少年と保護司の相性があわない場合

 少年と保護司の相性は,保護観察を成功させるために看過することができない要素です。

 仮に少年と保護司の相性が悪く,少年の更正の観点から,重大な問題が生じている場合,あるいは生じそうな場合には,保護観察所に,担当保護司を変更したり,直担にしたりすることを申し入れることもあります。

4 保護観察はいつになったら終わるのですか。

 保護観察の期間は,原則として,少年が20歳に達するまでです(更生保護法66条)。ただし,保護観察の決定が出てから,少年が20歳に達するまでの期間が2年に満たないときは,2年とされています(更生保護法66条)。

 もっとも,保護観察を継続する必要がなくなったときには,保護観察が解除されます。解除が検討される期間は,後記「5」の保護観察の類型によって異なります。

5 保護観察にはどのような種類がありますか。

(1) 一般保護観察について

 一般保護観察は, 文字どおり,一般的な保護観察です。一般的でない特殊な保護観察とは,①交通事件に関する保護観察と②短期処遇勧告がなされた保護観察ですので,それ以外が,一般短期保護観察となります。

 一般保護観察は,保護観察に付されてから,おおむね1年を経過し,3か月以上継続して成績良好であれば,解除が検討されます。

(2) 一般短期保護観察について

 一般短期保護観察は,交通事件以外の事件で,保護観察に付された少年で短期処遇勧告がなされた少年です。

 短期保護観察に付するのは,①非行性がそれほど根深くないもの,②資質に著しい偏りがないこと,③反社会的集団に加入していないこと,④保護環境が著しく不良でないことに該当して,かつ,特別遵守事項が決められていない少年であって,短期間の指導監督及び補導援護により更生を期待できるものです。

 一般保護観察は,おおむね6か月以上7か月以内の期間に解除が検討されます。逆に,10ヶ月以内に解除できないときは,一般保護観察に切り替えがされます。

(3) 交通保護観察について

 交通頬観察の対象となるのは,交通関係事件で保護観察に付された少年で,短期処遇勧告がなされていない少年です。交通保護観察では,一般保護観察,一般短期保護観察とは異なり,できるだけ交通事件の保護観察を専門に担当する保護観察官や交通法規に通じた保護司等が担当するように配慮されています。

 交通保護観察では,必要に応じて,交通法規,運転技術等に関する個別指導,交通道徳の滋養,運転技術向上を図るための集団処遇が行われています。

 交通保護観察では,おおむね6か月経過後に解除が検討されています。

(4) 交通短期保護観察について

 交通短期保護観察の対象となるのは,交通関係事件で保護観察に付された少年で,短期処遇勧告がなされた少年です。

 交通短期保護観察に付するのは,非行を繰り返すおそれがあることは前提として,①一般非行性がないか,またはあっても非行の深まりがないこと,②交通関係の非行性が固定化していないこと,③資質に著しい偏りがないこと、④対人関係に特に問題がないこと,⑤集団処遇への参加が期待できること,⑥保護環境がとくに不良でないことに該当して,かつ特別遵守事項を定めない少年であって,短期間の指導監督及び補導援護により更生を期待できるものです。

 交通短期保護観察では,原則として,保護観察官が直接集団処遇を行い,担当保護司は指名されず,個別処遇も行われません。保護観察官は、少年に毎月の生活状況を報告させたり,交通講習を行ったりします。

 交通短期保護観察は,おおむね3か月以上4か月以内に解除が検討されます。逆に,6か月を超えて解除ができないときは,保護観察決定をした家庭裁判所の意見を聴いたうえで,交通保護観察に切り替えられます。

6 保護観察はどのようなことをするのですか。

(1) 保護司等による指導

 一般保護観察に付されると,少年は,月に1回から2回程度,担当の保護司あるいは保護観察官を訪問して,近況を報告します。保護司等は,少年に必要な指導,助言等をしたり,場合によっては,就職先のあっせん等をしたりします。

 保護司は,月に一度,少年の生活状況と保護観察の経過を記載した報告書を保護観察所長に提出することになっています。保護観察官は,その報告書を読み,必要に応じて,保護司に指示したり,必要であれば自ら少年と面接をしたりすることもあります。

 細かく言いますと,保護観察の内容は,①指導監督と②補導援護の二つです(更生保護法49条1項)。指導監督は,面接等により,対象者の行状を把握するとともに,少年が遵守事項を遵守して生活するように必要な指示を行うことなどを内容としています(更生保護法57条)。一方,補導援護は,就職の助言や生活指導など,少年が健全な社会生活を営むために必要な援助や助言を与えるというものです(更生保護法58条)

(2) 遵守事項

 少年には,保護観察期間中,遵守すべき事項が定められ,保護司等からは,この遵守事項を守るように指導監督が行われます。遵守事項には,保護観察の対象となる少年全員が遵守することを求められる一般遵守事項と保護観察対象者ごとに定められる特別遵守事項があります。
 一般遵守事項は,更生保護法50条で決まっています。具体的な内容は以下のとおりです。
① 再犯・再非行をしないよう健全な生活態度を保持すること
② 保護観察官等の呼出・訪問・面接に応じ,指導監督のため求められた労働・通学状況,収入・支出状況,家庭環境,交友関係等についての申告,資料提出を行い,保護観察官等による指導監督を誠実に受けること
③ 住居を定めて届出をして,その住居に居住すること
④ 転居・長期旅行をするときはあらかじめ保護観察所長の許可を受けること

(3) 類型別処遇制度について

 保護観察では,非行の態様,特徴的な問題性等により少年をいくつかに類型化して,その特性に焦点を合わせた効率的な処遇を実施できるように配慮されています。現在は,シンナー等乱用,覚せい剤事犯,暴力団関係,暴走族,性犯罪等,精神障害等,中学生,校内暴力,無職等,家庭内暴力等の類型が定められています。

 なお,以下のコラムでは,保護観察の応用問題について解説しています。
 少年事件における保護観察期間中の遵守事項違反
 少年事件で保護観察期間中の遵守事項を守らなかったら?
 少年事件における保護観察所の社会貢献活動
 少年事件で保護観察の遵守事項に違反して少年院に送致された事案
 
 
 

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