学校事故の事例 野球部編①~どのような場合に学校に責任が認められるのか~

2014-01-01

野球は,明治初期の文明開化の時代に日本に伝えられたスポーツで古い伝統があります。甲子園や六大学野球の盛り上がりを見れば明らかなとおり,学生野球は,場合によっては,プロ野球をも凌ぐほどの人気のあるスポーツです。

一方,学校事故の中でも,部活動の時間中の事故の割合は多く,その中で,野球部の活動中の事故が一定数あります。野球部の活動中の事故には,バットによるもの,ボールによるもの,生徒同士の接触によるものなどがありますが,その中でも,ボールによる事故は重大な結果が発生することが少なくありません。特に,硬式野球においては,ボールの性質上,当たり所が悪いと極めて深刻な事故が発生することもあります。しかも,東京都内の学校は,強豪といえども,野球部専用に広いスペースを持った練習場を確保することが困難であることが多く,それなのに,部員数が非常に多いということも少なくありません。一歩間違えると,とても危険を伴う練習がされているといえるかと思います。狭いスペースの中で,多数人が同時に野球部の活動を安全に行うためには,安全に対する意識を持つとともに,緻密な計画を立てることが非常に重要になります。

当事務所も多くの野球部における事故の事件の相談に応じてきましたが,特に,硬式球がぶつかったことによる重大事故が目立ちます。

次回のコラムからは,野球部における事故に関する裁判例を分析して,どのような場合に学校側の責任が認められるのか,どのような基準で裁判所が判断しているのかを分析していきたいと考えています。

京都地裁H5.5.5判決
中学校の野球部紅白戦の最中,ファールボールが主審をしていた野球部員の目に直撃した事案。

・東京高等裁H6.5.24判決
    高校の野球部の部活動中,いわゆるハーフバッティングを練習していたところ,打球が投手をしていた野球部員に直撃した事案

・神戸地裁尼崎支部H11.3.31判決
 高校の野球部の部活動中,ピッチングマシン2台を並べてフリーバッティングを練習していたとき,マシンにボールを入れていた部員に、もう1台のマシンで練習をしていた部員の打球が,防球ネットが損傷していたためにネットを貫通して当たってしまった事例

・福岡地裁小倉支部H17.4.2判決
 野球部員Aが、顧問教諭の指導に従って、バットをスイング中にあえて放投する練習をしようとしたところ、そのバットが右斜め後方に飛び、約7メートル離れた地点でティーバッティングのトス係をしていた野球部員Bの左目に当たった事例

・名古屋地裁H18.10.13判決
 高校野球部でゴロをとる練習をしていた野球部員に,別のところでノックの練習をしていた野球部員のノック球が当たった事例

・横浜地裁S63.3.30判決
 トスバッティングの最中,被害生徒に対応するバッターの打球が被害生徒の左後方にそれたため,被害生徒がバッター側に背を向けて捕球しようとしたところ、隣の打者の打球が当該生徒に当たった事例。

・浦和地裁H1.3.31
 判決ピッチングマシンを使った練習中,マシンに球を入れる部員と捕手との連携がとれていなかったため,ピッチングマシンから飛び出した球がよそ見をしていた捕手の頭部左耳上部を直撃し.死亡した事例

 

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