少年事件と検察官関与制度

2015-05-05

少年事件の検察官関与制度とは,家庭裁判所が,一定の要件を満たす重大事件について,非行事実を認定するための審判の手続に検察官が関与する必要があると認めるときに,裁判所の決定により,少年審判に検察官を出席させる制度です(少年法22条の2第1項)。

少年審判では,原則として,検察官が出席することはありません。検察官関与制度の趣旨は,非行事実について激しく争われる事件等について,証拠の収集,吟味における多角的視点の確保,少年と裁判官が激しく対峙する状況を回避して, 非行事実の適正な認定を図るという点にあります。

検察官関与決定があった場合には,検察官が,非行事実の認定に資する程度で,事件の記録・証拠物の閲覧・謄写,審判に出席,証人への尋問,少年本人尋問,意見陳述を行う権限が認められることになります(少年審判規則30条の5,同7条,同30条の6,同30条の8第1項,同30条の8第2項,同30条の10)。

検察官関与の決定が下されるのは,

①   故意の犯罪行為により被害物を死亡させた罪,その他死刑または無期もしくは長期3年を超える懲役若しくは禁固に該当する罪に該当すること

②   非行事実を認定するために検察官が関与する必要がある場合

です。

もっとも,少年審判に検察官が関与することは,弊害もあります。そもそも,少年審判は,少年法の目的の実現のために,「懇切を旨として,和やかに行う」とされています(少年法22条で明記されています。)。しかし,検察官が,少年審判に出席するだけで,審判の雰囲気が一変することは少なくありません。また,少年に威圧的な態度で接して,糾弾するような検察官もいることは事実です。そのような場合,少年は,審判官からの質問を的確に理解できなくなったり,自己の意見を適切に伝えることができなくなったりすることがあります。このように検察官関与制度は,少年審判を変容させ,少年の立ち直りにも悪影響を及ぼす可能性を内包したものであることは否定できません。私自身は,経験がないのですが,単独犯であっても,また,被害金額が小さくても,被告事実を争ったら,検察官に反論の機会を与えるため,検察官を関与させることが公平であるという話をする裁判官もいるようです。2014年の法改正で,検察官対象事件は大幅に増加しましたが,当該改正は,オレオレ詐欺の否認事件や共犯者がいる恐喝,傷害事件などで共犯者の供述が一致せず,事案の真相が見えにくい事件で適切な事実認定を図ることを目的としたもので,当該改正の趣旨に反した運用がなされているとすれば問題があるといわざるを得ません。

そこで,検察官が,検察官関与の申出をした場合には,付添人の立場から,検察官関与が不相当であるという内容の意見書を提出して,検察官関与決定をさせないような活動をすることがあります。例えば,非行事実について争いがない場合,あるいは,非行事実について争いがあるものの犯罪の成立に影響を及ぼすような重大なものではない等の場合等について,検察官から関与の申出があった場合,このような付添人活動をしていくことになります。

★以下では,品川総合法律事務所の少年事件の処理方針等を説明しています。
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