少年事件の保護観察所における社会貢献活動

2016-02-26

1 社会貢献活動の義務付け

 社会貢献活動は,平成23年度から保護観察の処遇の一つとして導入されました。そして,平成27年6月から特別遵守事項の一つとして,保護観察の対象者に義務付けて行うことができるようになりました(保護観察の説明自体は,少年事件の紹介ページ「少年事件に強い弁護士」保護観察について(少年事件) で説明しています。)

 更生保護法51条2項6号は,特別遵守事項として,「善良な社会の一員としての意識の涵養及び規範意識の向上に資する地域社会の利益の増進に寄与する社会的活動を一定の時間行うこと」を定めることができると規定しており,この「社会活動」がいわゆる社会貢献活動というものです。

 少年事件の保護観察の処遇の一つとしても効果を挙げている制度ですのでご紹介します。

2 社会貢献活動の内容,対象者

 社会貢献活動は,保護観察中の人が,地域社会に貢献する活動を通じて,更生を図ることを目的とした制度です。社会貢献活動は,対象者の改善更生を目的として実施されるもので,贖罪,制裁を目的とするものでないことが特徴です。

 具体的な活動内容は,
① 老人施設や障害者支援施設での清掃活動での清掃活動や介護補助活動
② 公共施設等での清掃活動
③ 違反広告物撤去作業
④ 切手整理活動
等です。

 社会貢献活動が導入される以前から,保護観察所では,「社会参加活動」と呼ばれるボランティア活動を実施していました。従前の「社会参加活動」では,福祉施設での活動,清掃活動,レクリエーション活動,体験活動が実施されてきました。もっとも,現在はレクリエーション活動,体験活動を除く活動は,基本的に社会貢献活動として位置づけられています(社会参加活動は,レクリエーション活動や体験学習等を行うものとして現在も存続しています。)。

 社会貢献活動の対象者は,①自己有用感や社会性が乏しく,社会から孤立する傾向が顕著であるもの,②特段の理由がなく,不就労または不就学の状態が継続しているもの,③素行不良者と交友があり,その影響のもとで同調的に行動する傾向が顕著であるもの,④比較的軽微な犯罪,非行を繰り返すもののいずれかに該当して,社会貢献活動により処遇効果が期待できるものとされています。
 特に,仕事や学業に従事していない少年,通信制高校に通っていたり,フリーターをしている少年等の比較的自由な時間を持っている
少年には処遇効果が期待される制度となっています。

 社会貢献活動は,特別遵守事項として義務付けられて参加する対象者もいれば,保護観察官等の働きかけに同意して任意に参加する対象者もいます。

 特別遵守事項の場合は5回参加が義務となっております。任意参加の場合には回数の定めはありません。活動は原則として1回につき2時間から5時間程度行われます。

3 社会貢献活動の意味

 保護観察は,犯罪や非行した対象者に対して,社会内での指導や支援を行うことを通じて,その改善更生や再犯防止を図る制度です。

 非行をして保護観察処分になる少年は,物事が続かずに挫折を繰り返した経験が多く,そのために,他人から感謝されることが少なく,自己肯定感が低いことが多いです。そのような少年が社会貢献活動をすることで,貴重な社会経験を積むことができるとともに,健全な方法で社会に貢献していることを実感して達成感を味わうことができることも少なくないようです。特に,第三者から感謝されたり,プラスの評価をされたりすることで,自己肯定感を高めることは,重要な意義があると思います(施設利用者等からの温かい言葉は,少年にとって一定のインパクトを持つことが多いようです。)。社会貢献活動をして自信を得た少年が,社会に踏み出していくきっかけをつかみ,就労につながるようなケースもあるようです。私自身も,少年が,社会貢献活動等を通じて,施設利用者と交流,保護司,保護観察官とともに作業をして連帯感を味わうことで,社会にかかわる自信を持つことができるようになったようなケースも認識しています。

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