最高裁平成26年1月14日第三小法廷判決について

2014-01-24

先日,認知の無効に関する重要な最高裁判所の判決が出ました。

争点は,

「血縁上の親子関係がないことを知りつつ認知した父親でも,認知の無効を主張することができるか」

という点でした。

判決は,父親が血縁関係のないことを認識して認知したとしても,原則として,認知の無効を主張することができると判示しました。

これまでは,このような場合に,父親からの認知無効を認める見解と認めない見解で争いがあり,どちらの見解も有力に主張されていました。

無効の主張を否定する見解の論拠はいくつかありますが,一番重要なものは「子の地位の安定」です。

要するに,父親が,血縁関係のないことを知りつつ認知をして,一応父子関係を発生させたのに,気が変わったからといって,認知の無効を主張できるとなると,子の地位があまりに不安定になるということです。認知をして法律的な親子になると扶養義務が発生するなどの一定の効果が発生します。自分の意思で認知をした父親が勝手に認知の無効を主張して,これらの法律関係を無くしてしまうことは許されないのではないかということです。

この判決の上告人(認知された子どもです。)も,「気まぐれな認知と身勝手な無効の主張を許すこと」は相当でないと主張しています。

これに対して,最高裁は,「認知者が認知をするに至る事情は様々であり,自らの意思で認知したことを重視して認知者自身による無効の主張を一切許さないと解することは相当でない。」「認知を受けた子の保護の観点からみても,あえて認知者自身による無効の主張を一律に制限すべき理由に乏しく・・・」と判示して,原則として父親からの無効主張を認めています。

もっとも,裁判所も,「子の地位の安定」という点を配慮していないわけではありません。裁判所は,「具多的な事案に応じてその必要がある場合には,権利濫用の法理などによりこの主張を制限することも可能である」と判示しています。「気まぐれな認知と身勝手な無効主張」により子の地位の安定が害される場合には,権利濫用の法理により,無効主張を制限する可能性があることを示しました。

 

非常にざっくり言いますと,この判例は,法律上の親子関係を発生させるかどうかについて,生物学的親子関係(血縁上の親子関係)があるかどうかを重視したもので,近年の裁判例の傾向と一致するように思います。生物学的親子関係の重視という傾向は今後も続いていくものと考えられます。生物学的親子関係は,DNA鑑定によって明らかになるもので,結局,DNA鑑定の結果が結論に反映されるような傾向が続くものと思います。

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