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小規模個人再生と収入要件

2017-05-19

1 小規模個人再生の収入要件
 小規模個人再生手続を利用するためには,「将来において継続的に又は反復して収入を得る見込みがある」(民事再生法221条1項)ことが要件になります。
 もし,将来的に継続して反復して収入を得る見込みがないことが明らかな場合には,再生手続の申立は棄却されて,手続が開始されないことになったり,履行可能性がある再生計画案を作成する見込みがないことが明らかであるとして再生手続が廃止になったり,再生計画案を提出しても再生計画が不認可となったりします。
 要するに,小規模個人再生を利用するためには,ある程度安定した収入が見込まれる必要があるのです。
 一般論として,小規模個人再生の収入要件は,申立人のこれまでの就労実績,勤労意欲,定職に就く可能性,年齢等を考慮して決めるとされています。
 これまで一定期間就労していた実績があったり,有用な資格を持っているのであれば,仮に,一時的に無職になっていたとしても,収入要件を満たす可能性は高いと思われますし,逆に,無職の期間が長く,ほとんど定職についたことがないということであれば,収入要件が認められない方向に傾くと思われます。いずれにせよ,申立人の状況等から個別具体的に判断していくよりほかありません。

2 アルバイト収入しかない場合
 アルバイト収入しかない場合であっても,小規模個人再生手続を利用できるのでしょうか。アルバイトですと,雇用継続の可能性が必ずしも高くはない場合があるので問題となります。
 重要なのは,アルバイト収入のみの場合,雇用の継続がどの程度見込まれるかという点です。以下のような場合には,少なくとも,収入要件により利用適格が否定される可能性は少ないと思います。
①同一のアルバイト先で相当期間勤務を継続している実績がある。
②同一のアルバイト先での勤務を継続しているわけではなく,職場はかわっていても,就労自体は継続している。
 一方,問題なのは,アルバイト等の実績が短期間しかない場合です。実際問題として,アルバイトであっても,よほどのことがない限り,雇用の継続が見込まれることもありますので,単に,アルバイト等の実績が短期間しかないということだけで,小規模個人再生手続の利用を否定することは相当ではないと思います。

3 失業中の場合
 失業中であっても,既に就職が決まっている場合には,小規模個人再生手続を利用できる可能性が高いと思われます。
 就職が決まってない場合は,就職の見込があるかどうかが問題になってくると思います。特に,雇用保険の受給中は,就職活動を控えたり,あるいはアルバイト等にとどめたりする場合も少なくないかと思います。その場合には,就職に見込がどの程度あるかが重要になると考えられます。そして,就業の見込は,申立人のこれまでの実績,年齢,資格の有無等が問題になると考えられます。当然のことですが,雇用保険の受給期間は決まっておりますので,雇用保険の給付だけしか収入の見込がない状況ですと,個人再生手続を利用することはできないということになります。

4 年金受給者・生活保護受給者の場合
 年金受給者の場合は,継続的な収入の見込みがあることになりますので,小規模個人再生の手続を利用することは可能です(ただし,年金額が再生計画を遂行する見込みのある金額かどうかは,別途問題になりえます。)。
 一方,生活保護受給者の場合であっても,継続的な収入の見込があることは事実ですので,将来にわたり継続的な収入の見込があるといえると思います。ただ,生活保護は,最低限度の生活をするために必要な金額を給付されるものであって,債務の返済等に利用することは予定されていないものですので,再生計画を遂行する見込みがある収入とは認められないものと思います。

                               以上

 

  

 

 

 

アルバイト収入だけで個人再生ができるか

2017-05-18

 アルバイト収入だけで,個人再生できるかについて,少し詳しく説明します。

一般的には,「現実的に就労しており弁済原資となり得る程度の収入を得ている場合には,アルバイトであったとしても,当該アルバイトが期間限定の雇用であって雇用の継続を見込めないことが明らかである場合を除き,小規模個人再生の利用適格要件を欠くとまではいえません。」とされています(『個人再生の手引』(第2版)判例タイムズ社 83頁)。

 そのため,ポイントは,雇用継続の可能性がどれくらい見込めるかという点の判断になります。アルバイトにおける「雇用継続の可能性」は,これまでの勤務実績が重要な考慮要素になります。具体的には,同一のアルバイト先で相当期間勤務を継続している実績がある場合や同一のアルバイト先での勤務を継続しているわけではなく,職場はかわっていても,就労自体は継続している場合には,「雇用継続の可能性」は優に認められると思います。

 また,短期間のアルバイト経験しかない場合であっても,個人再生の収入要件を満たす場合はあると思います。

 例えば,当事務所では,アルバイト収入だけしかなく,当該アルバイトも3か月程度しか続いていない事案で,アルバイト収入から弁済原資を確保することができること,就職活動の結果,正社員としての就業の可能性が相当程度あること,一定額の貯金がありこれを弁済原資として考慮することが可能であることなどから,個人再生手続の利用を認めてもらった事案があります。

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