オレオレ詐欺と少年事件(少年院送致を回避する!)

2016-03-14

 これまでのコラムでたびたび指摘をしているとおり,オレオレ詐欺に関与した少年を少年院送致にするか,保護観察にするかはとても悩ましい問題です。被害金額の大きさを重視すれば,少年院送致に傾き,少年の更生可能性を重視すれば,保護観察に傾くという事案が多いのです。
 いずれにせよ,少年の弁護人・付添人は,少年の更生の可能性を信じて,少年院送致を避けるべく活動をしていくことが多いと思います。以下では私の経験上,少年院送致を回避するために,どのような点を重視して,どのような活動をする必要がよいのかを備忘録的にまとめてみました。
 オレオレ詐欺の事案は,非常に難しい事案ばかりで,以下のまとめも十分なものではないと思いますが,それでも,私が担当したオレオレ詐欺の事案は,ほとんど少年院送致を回避することができています。

 分かりやすいように事例として,以下を題材にしたいと思います。
 少年Aが,懇意にしていた不良グループの友人Bから,「荷物を受け取る仕事をして欲しい,報酬は1回10万円。捕まるかもしれないけど,どんな荷物を受け取るか知らなけかったければ,すぐ釈放される。」と言われて,Aは,オレオレ詐欺だろうなとは思ったものの,いろいろ聞くのも野暮だと思い,遊ぶお金が欲しかったこともあって,その仕事をすることして,結局,ある日指定の場所に出向いて,オレオレ詐欺の受け子として被害者Cから500万円を受け取った。

1 詐欺に関与していた期間・回数について
重要度 ★★★★★

 まず,重要なのは,少年が,どの程度の期間にどの程度の件数の詐欺に関与していたかという点です。この点はとても重要で,場合によっては,決定的に重要な意味を持つことも少なくありません。
 長い期間,たくさんのオレオレ詐欺に関与していたということであれば,その少年は,詐欺であることを強く認識して,たくさんの被害者がたくさんのお金を失っていたことを理解して,それでもなお詐欺に関与していたということになります。そうすると,少年の問題性はとても大きく,少年院送致の判断に傾くと思います。
 一方,少年が,1回だけしか関与していないというような事案ですと,オレオレ詐欺の悪質性を認識する機会に乏しく,少年自身の問題性は必ずしも大きくないと評価される余地がでてきます。
 オレオレ詐欺の事案では,まずは,少年がどのくらいの期間にどの程度の件数の詐欺に関与していたのかを把握することが不可欠です。そして,関与期間が短く,関与回数が少ないということであれば,その点を少年自身の問題性が大きくないことと結び付けて主張していくことが重要です。

2 被害金額の多寡
重要度 ★(ただし,場合によっては,★★★★)
 いうまでもなく,本事例の被害額500万円という金額は多額です。成人の刑事事件でいえば,通常,実刑判決となるような事案です(示談等が成立する場合は別ですが。)。
 ただし,少年事件の場合ですと,被害金額が決定的な意味を持つわけではありません。受け子として受け取ったお金がたまたま大きかったからといって,少年自身の問題性が大きかったとはいえませんし,逆もまた然りです(ありていに言えば,出し子にとっては,被害金額の多寡は,偶然の要素が強いと思われます。)。
 ただ,「1」とも関係しますが,多額のお金を受け取ったにもかかわらず,なお,オレオレ詐欺を続けていたということになると,少年の問題性は大きいと考えられ,少年院送致の判断に傾いていくものと思われます。

3 詐欺であることの認識
重要度 ★★★★

 オレオレ詐欺の受け子ですと,少年は,単に荷物を受け取ってこいというようなことをいわれたに過ぎないこともあります。少年は,「なんか怪しいな」,「オレオレ詐欺かもしれないな。でもどうやって騙されているのか分からない。」というような微妙な認識を持ちながら,上からの指示に従って,受け子の役割を果たすというケースもあります。オレオレ詐欺に関与していると明確に認識して,あえてオレオレ詐欺に関与するよりも,その点の認識が曖昧な場合のほうが,少年の問題は大きくないと判断されることが多いと思います。
 極めて重要なのは,取調で少年がそのような認識を正確に説明して,それに沿った供述調書をつくることです。「なんか怪しいな」という認識は,「オレオレ詐欺で間違いないな」という認識とも違いますし,「オレオレ詐欺ではないな。」という認識とも違います。グレーは,グレーであって,黒でも白でもないのです。そのあたりを,取調において少年が正確に説明して,その説明どおりの供述調書を作成していくことができるかが極めて重要になるのです。ただ,そのように自分の認識を正確に表現をすることは簡単なことではありません。まずは,少年の認識を時系列で正確に把握をしたうえで,それをきちんと表現することができるようにすることが必須です。私は,少年の認識が問われるケースにおいては,少年と繰り返し取り調べの予行練習をすることがあります。

(続く)

 

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