振り込め詐欺と少年事件(少年院送致の決定を取消した事案①)

2016-03-11

  前回のコラム(振り込め詐欺と少年事件(少年院送致と保護観察を分けたもの))でも説明をしたとおり,振り込め詐欺の少年事件は被害金額が多額で欺罔方法も悪質であることから犯情の悪質性が高い一方,少年の役割が受動的で故意の認識も曖昧なものにとどまることが少なくないという特徴があり,少年院送致とするのか,保護観察とするのかは,相当悩む事案も少なくありません。

 いくつかの少年審判例を参考としながら,少年の振り込め詐欺の事件の処遇について考えてみたいと思います。特に,少年院送致と保護観察を分けたものは何だったのかという観点から検討していきたいと思います。

 東京高等裁判所平成27年6月24日の決定は,詐欺に関与した少年を少年院送致とした千葉家庭裁判所の決定を取り消した事例です。

 事案の内容としては,以下のとおりです。

・少年が,友人や知らない人と共謀していた。

・少年以外の共犯者が,警察官になりすまして高齢の被害者8名に対して9回にわたり電話で被害者らの預貯金を保護するため,金融機関等から至急預貯金を引き出して,被害者宅を訪れる警察官や金融機関関係者に交付する必要があるかのような嘘を言った。

・少年やその他の共犯者が,警察官や金融機関関係者に成りすまして現金約4555万円をだまし取った。

・少年は,友人である共犯少年から,「ブラックな仕事」を一緒にしようと誘われていた。

・少年は中学生2年のころまでは特に問題は見られなかったが,その後,共犯少年と不良交友が始まり,夜遊びや怠学が目立つようになり,数件の補導歴があった。

・家庭裁判所の事件係属歴はない。

・少年は,家族関係の問題から,家出して共犯少年のアパートに住むようになったことがあり,そのときに,共犯少年の期限を損ねたくないという思いもあり,共犯少年が所属していた詐欺グループに加わり詐欺に関わるようになった。

・もっとも,少年は,家出後,約2か月程度で自宅に戻っており,詐欺グループとのかかわり合いもなくなった。

・その後は,詐欺グループからの誘いに応じず,アルバイトをしていた。

 以上の事実関係を基にして,東京高等裁判所は,「少年は,共犯少年に誘われて本件非行に及んだものの,その後は,自宅に戻り,詐欺グループとの関係を断ち切り,正業に就いて働く姿勢を示していたのであって,これらの事情からすると,本件非行は一過性のものであり,少年の非行性は原決定が憂慮するほど進行していないように思われる。」などと判示して,少年院送致とした原審決定を差し戻しました。 

 この事例において被害金額は,4555万円と非常に多額となっていて,犯情が悪質であることは否定できません。ただ,一方で,少年が,詐欺に関与していたのは,数か月に限定されています。そもそも,少年が,詐欺グループに加わった経緯は,家出をして共犯少年と一緒に暮らしていた時に,たまたま共犯少年が詐欺グループに入っていたからです。もともと,詐欺グループと濃厚な関係があったわけではないということもうかがうことができます。もちろん,家族の関係に改善がなければ,少年が,再度,家出して詐欺グループと接点を持つ可能性もあると思われますが,裁判所は「少年と家族との関係には改善の兆しが見られ・・・」と判示しており,その点も,強く憂慮することはできないと判断しています。
 そして
,少年は,自宅に戻ってから,詐欺グループとの関わり合いを絶っており(現実的に,詐欺グループからの誘いにものっていない。),少年が,二度と詐欺グループに関わらないということは十分に現実的だと思います。

 本件で少年院送致が相当とならなかったのは,少年に非行性の深化が見られなかったことが大きな要因になったことは明白です。そして,詐欺グループにいた期間,詐欺グループに入った原因,あるいはその原因が解消されるかという点が重要な判断材料になっているものと思われます。
 
本件は,詐欺グループに入っている!ということから,少年の非行性が深いと安易に認めることの危険性を示していると思います。少年の生活歴,環境面等を丁寧に分析して,非行の原因を探っていき,現時点ではその原因が解決していると説得的に説明していくことが必要であると考えさせる事案です(続)。

★以下では,品川総合法律事務所の少年事件の処理方針等を説明しています。
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