振り込め詐欺と少年事件(少年院送致と保護観察を分けるもの)

2016-03-07

 1 少年の詐欺事件の増加

  最近,振り込め詐欺に関わった少年の刑事事件を扱うことが多くなりました。

 振り込め詐欺とは,「オレオレ詐欺」,「架空請求詐欺」,「融資保証詐欺」,「還付金等詐欺」等の詐欺の総称で,いわゆる特殊詐欺と呼ばれるもののうちの一つです。「オレオレ詐欺」と「架空請求詐欺」はイメージしやすいと思います。一方,融資保証詐欺とは,実際には融資しないにも関わらず,融資する旨の文書等を送付するなどして,融資を申し込んできたものに対し,保証金等を名目に現金を預金口座等に振り込ませるなどの方法によりだまし取る詐欺です。還付金等詐欺とは,税務署や区役所等を名乗り「税金や医療費等を返還します」等とATMに行かせて,携帯電話で還付手続きを指示するふりをし,実は犯人の口座にお金振り込む手続きをさせるなどの方法によりだまし取る詐欺です。

 司法統計年報によると,裁判所に送致された少年事件(ただし,簡易送致等の一定の事件を除きます。)のうち,詐欺の事件が占める割合は,平成17年から24年までは,0.9%から1.2%であったのに対して,平成25年には1.4%,平成26年には1.8%に上昇しています。
 このような上昇の理由の一つには,振り込め詐欺の加害少年の送致数の増加があるものと考えられます。

2 少年の振り込め詐欺事件の特徴

  振り込め詐欺に関与した少年について,どのような処遇にするか,端的にいえば,保護観察等にするのか,少年院送致にするのか,非常に悩ましい事案が少なくありません。

 これは,振り込め詐欺の事件の特徴が影響しているものと考えられます。
 一般論として,振り込め詐欺は,被害金額が多額になることが多く,今なお重大な社会問題で犯罪予防の必要性も高いこと犯罪類型です。そのため,振り込め詐欺は,一般的には,詐欺事件の中でも,特に悪質性が高い事件であるとされると評価される傾向があると思います。
 実際に,振り込め詐欺の事件は,成人の場合であっても,少年の場合であっても,厳罰化が進んでいると強く感じます。一昔前には,執行猶予がついたり,保護観察になったりする事件であっても,今では,実刑判決が下されたり,少年院送致の処分となったりすることが多くなったと実感しています。
 今なお,振り込め詐欺が跋扈している現状からすると,このような厳罰化の流れもやむを得ないことだとは思います。
 ただ,一方で,多くの振り込め詐欺の少年事件を担当していると,情状酌量を認めてもらいたい!少年院に行かせたくない!と強く思う事案もあります。
 振り込め詐欺は,複数人が役割を分担して行うことが多く,例えば,詐欺の電話を架ける「架け子」,被害者から現金を受け取る「受け子」,見張りをする「見張り役」等の役割を分担することがあります。そして,特に,少年の場合ですと,末端で受け子,見張り役として振り込め詐欺に関与することが多く,少年の役割が,受動的,消極的なものであることが少なくありません。また,そもそも,振り込め詐欺に関与しているという意識が希薄で,例えば,少年の認識としては,「詐欺のような犯罪に関与しているかもしれないな!」という程度にとどまることも少なくありません。
 当初は,単なる単なる合法的なアルバイトとして勧誘されて,途中で,詐欺であることに気付くようなケースもあります。私が担当した事件の中には,前歴がなく,真面目に大学に通っている少年が,アルバイト感覚で,振り込め詐欺に関与するようになってしまうというものもありました。このような事態が起こるのは,少年独特の判断能力や社会経験の乏しさが大きく影響しているように思います。
 被害金額は,莫大でマスコミにも取り上げられるような社会的影響も大きい事件であっても,関与した少年には要保護性が小さく,再犯の可能性が乏しいのではないかと思える事件も少なくないのです。

3 少年審判での処遇はどうなるのか。

  上記のとおり,振り込め詐欺の少年事件の処遇は非常に難しいものがあり,裁判所でも,様々な事情を慎重に考慮しているようです。次回から最近の審判例を参考にしながら、裁判所の考え方等を探っていきたいと思います。特に,少年院送致と保護観察を分かつものは何だったのか!というような事情探っていきたいと思います(続)。

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