たばこ1箱を万引きして少年院送致の決定が下された事例

2018-11-18

少年事件における処遇は,①非行事実の軽重と②要保護性(ざっくりいうと,少年が将来非行に及ぶ危険性がどの程度あるかというものです。)から決められます。要するに,やってしまったことが重大で将来にわたっても非行に及ぶ可能性が高いということであれば,少年院送致等の重い処分になる可能性が高くなるということになります。

多くの場合には,非行事実が重大であると,将来非行に及ぶ危険性が高いという相関関係がありますが,そのような相関関係がない場合もあります。

東京家庭裁判所平成29年7月14日の審判の事案は,非行事実自体は軽微だったものの,再非行の可能性が極めて高く,そのため,少年院送致という重い決定が下された事案です。

具体的には,少年は,たばこ1箱(440円相当)を盗んだだけなのに,少年院送致の決定が下されています。

裁判所は,以下の事情等から再非行の可能性が高いと判断しています。

① 同じような窃盗の事案でこれまで3回裁判所に送致されている(ただ,いずれも審判不開始になっているようです。)。

② 母親も一緒に被害店舗に行って,万引きをして逮捕されているなど,少年を適切に指導監督することができるものは見当たらない。

③ 少年には知的能力に制約があり,活気や気力にと乏しく,深刻な無力感といった根深い資質上の問題がある。

④ 睡眠薬に依存した低調な生活を続けている。

この事案は,非行の結果が軽微なのにもかかわらず,少年院送致という重い処分が下されたもので非常に参考になります。本件では,少年の母方祖母が,少年の引き受けに意欲を示して自宅に少年の居住スペースまで確保していたという事情があるようですが,健康状態が悪化していたようで,相当期間にわたって少年を引き取り,有効適切に指導監督することまでは期待できないと判断されています。もしかしたら,少年の祖母の健康状態の悪化という事情がなければ,試験観察等で様子をみるという可能性もあったのではないかと思われます。

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