オレオレ詐欺と少年事件(少年院送致か保護観察か)

2016-03-06

 1 少年の詐欺事件の増加

  最近,オレオレ詐欺に関わった少年の刑事事件を扱うことが多くなりました。
 オレオレ詐欺とは,いわゆる特殊詐欺と呼ばれるもののうちの一つです。特殊詐欺には,オレオレ詐欺のほか,架空請求詐欺,融資保証詐欺,還付金詐欺などが含まれます。
 オレオレ詐欺を含む特殊詐欺の事案は,全ての少年事件の件数の中でも相当数を占めているようです。

2 少年のオレオレ詐欺事件の特徴

  オレオレ詐欺に関与した少年について,どのような処遇にするか,端的にいえば,保護観察等にするのか,少年院送致にするのか,非常に悩ましい事案が少なくありません。被害金額が大きく,悪質な詐欺だと思われる一方,少年自身の問題は必ずしも根深くないような事案があるのです。

 一般論として,オレオレ詐欺は,被害金額が大きな金額になることが多いです。成人の事件ですと,被害金額が100万円を超えてくると,実刑判決(執行猶予がつかない判決)を意識するようになることが多いように思いますが,オレオレ詐欺の場合,被害金額は簡単に100万円を超えてきます。
 実際に,オレオレ詐欺の事件は,成人の場合であっても,少年の場合であっても,厳罰化が進んでいると強く感じます。一昔前には,執行猶予がついたり,保護観察になったりする事件であっても,今では,実刑判決が下されたり,少年院送致の処分となったりすることが多くなったと実感します。
 今なお,オレオレ詐欺が跋扈している現状からすると,このような厳罰化の流れもやむを得ないことだとは思います。
 ただ,一方で,多くのオレオレ詐欺の少年事件を担当していると,情状酌量を認めてもらいたい!少年院に行かせたくない!と強く思う事案も間違いなくあります。
 オレオレ詐欺は,複数人が役割を分担して行うことが多く,例えば,詐欺の電話を架ける「架け子」,被害者から現金を受け取る「受け子」,見張りをする「見張り役」等の役割を分担することがあります。そして,特に,少年の場合ですと,末端で受け子,見張り役として振り込め詐欺に関与することが多く,少年の役割が,受動的,消極的なものであることが少なくありません。また,そもそも,詐欺に関与しているという意識が希薄で,例えば,少年の認識としては,「詐欺のような犯罪に関与しているかもしれないな!」という程度にとどまることも少なくありません。
 当初は,単なる単なる合法的なアルバイトとして勧誘されて,途中で,詐欺であることに気付くようなケースもあります。私が担当した事件の中には,前歴がなく,真面目に大学に通っている少年が,アルバイト感覚で,振り込め詐欺に関与するようになってしまうというものもありました。このような事態が起こるのは,少年独特の判断能力や社会経験の乏しさが大きく影響しているように思います。
 被害金額は,莫大でマスコミにも取り上げられるような社会的影響も大きい事件であっても,関与した少年には問題性は小さく,再犯の可能性が乏しいのではないかと思える事件も少なくないのです。

3 少年審判での処遇はどうなるのか。

  上記のとおり,オレオレ詐欺の少年事件の処遇は非常に難しいものがあり,裁判所でも,様々な事情を慎重に考慮しているようです。次回から最近の審判例を参考にしながら、裁判所の考え方等を探っていきたいと思います。特に,少年院送致と保護観察を分かつものは何だったのか!というような観点から審判例を検討していきたいと思います(続)。

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