少年事件における観護措置の要件と「ショック療法」

2014-05-15

観護措置とは,少年事件において,家庭裁判所が,事件を受理してから最終的な決定を行うまでの期間,少年の身柄を保全するとともに,少年の心身を鑑別する必要があると判断した場合,最終的な決定まで,暫定的に少年を保護するための措置です。

観護措置には,家庭裁判所調査官の観護に付する措置(少年法17条1項1号)と少年鑑別所で身柄を拘束する収容観護の2種類があります。しかしながら,実務上,前者はほとんど行われておらず,観護措置は後者の収容観護を指すのが一般的です。

観護措置の要件は,①審判条件があること,②少年が非行を犯したことを疑うに足りる相当な理由があること,③観護措置の必要性が認められることです。

実務上,クルーシャルな問題となるのは,③の要件です。一般的には,③は,①´証拠隠滅のおそれ,逃亡のおそれがあるため身柄を拘束する必要があること,②´緊急的に少年の保護が必要があること(自傷,自殺のおそれがある場合,家族から虐待のおそれがある場合等),③´少年を収容して心身鑑別をする必要があることのいずれかに該当する場合に認められるとされています。

以上の要件に該当しなければ,観護措置決定を行うことができないとするのが一般的な考え方です。

しかしながら,実務上は,非行に対する懲罰として,社会から隔離して,鑑別所に収容することで,少年を反省させるという,いわゆる「ショック療法」とすることを目的として,観護措置決定がなされているのではないかと思われる事案がないわけではありません。

私自身,付添人として,裁判官と面会した際に,裁判官から,「鑑別所に行ってもらって,反省させたほうがいいでしょう。」というようなニュアンスのことをいわれたことがあり,「ショック療法」という考え方が,根強く残っていると実感したことがあります。また,「少年鑑別所における観護措置の意義」(白鵬法学創刊号)によると,付添人経験がある弁護士を対象に,「ショック療法」を重視することについての見解を聴取したところ,13%の弁護士が,「賛成」「やや賛成」と回答したとのことです(ただし,20年以上前の調査です。)。

確かに,「結果として少年鑑別所の処遇が教育・治療的な機能を果たすことは望ましいことであり,一定期間社会から隔絶することにより,少年に対し,事故を見つめ直す機会と場を与え」(注釈少年法[第3版]田宮裕・廣瀬健二[編]169頁)ることは望ましいことと思いますし,実際に,そのような効果がみられる事案もあります。もっとも,あくまで観護措置の要件は,上記のとおりであり,懲罰的な「ショック療法」のみを目的とする観護措置は許されないことは当然のことで,付添人の立場から厳重にチェックをする必要があると考えています。

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