特別縁故者に関する裁判例の分析③
特別縁故者に該当するとされた場合,次に問題となるのが「分与の相当性」です。「分与の相当性」とは,どの程度の財産を分与するのが妥当かという問題です。
かつては,全部分与が原則で,一部分与は申立人が被相続人と親族関係のない知人とか,親族であっても六親等など遠縁のものに限られるというような説明がされていた時期もありました(久貴忠彦『判例特別縁故者法』195頁以下)。ただ,現在では,少なくとも,相当の財産がある場合には,全部縁故が認められるケースは少なく,一部縁故を認めることが圧倒的に多いのではないかと思います。
「分与の相当性」は,申立人と被相続人との縁故関係の具体的な内容,濃淡,程度を中心として,相続財産の種類,数額,種類,状況,被相続人の意思等が考慮されるといわれています。
神戸家庭裁判所尼崎支部令和元年6月10日の審判は,被相続人の相続財産(総額6700万円)のうち2000万円の分与を認めていますが,「分与の相当性」をどのように判断するのかを考えるうえで参考になります。
この事例で申立人と被相続人の関係は以下のようなものでした。
①申立人にとって被相続人は母方の従妹
②申立人は,被相続人と月1回から2回程度会ったり,電話でのやり取りをしたりする時期があった(期間は不明)。
③申立人は,被相続人が入院するにあたり,保証人になった。
④入院後は,見舞いを「欠かさなかった」(頻度は不明)
⑤被相続人は,預貯金の半分を申立人に遺すことを記していた。
⑥申立人は,被相続人の葬儀に代わるお別れ会を行ったり,残務処理を行ったりしていた。
この審判が認定した事実関係を見ても,申立人と被相続人の縁故関係が必ずしも濃いようには見えません。特に,申立人の連絡内容の頻度,申立人が病院に面会に行った頻度が具体的に認定されていないことからすれば,2000万円という分与額は高額ではないかとも思いました。ただ,この審判では,⑤のように被相続人が預貯金等の半分を申立人に遺すとの意思を示していたことが大きかったと思われます。(続)