少年事件の要保護性とは?

2016-01-04

1 要保護性って何?

 少年事件では,非行事実に加えて,要保護性も少年審判での審理の対象になるとされています。

 要保護性とは,簡単にいうと,少年による再犯の危険性があり,保護処分により再犯の防止できることとされています(保護処分とは,少年院送致,保護観察等の処分です。)。
具体的には,以下の三つの要素から構成されているといわれています(少年法実務講義案(再訂版)39頁から40頁を参照)。

① 犯罪的危険性
 この要素は,少年が,性格,環境等から,将来,非行を繰り返す可能性があることです。

② 矯正可能性
 この要素は,保護処分によって,少年の犯罪的危険性を除去できる可能性があることです。

③ 保護相当性
 この要素は,少年の処遇にとって,保護処分が有効,適切な手段であることです。例えば,児童福祉法上の措置や刑事処分など,他の手段をとることがより適切である場合には,要保護性がかけ保護処分に付することはできないことになります。

 少年法のもとでは,少年が非行事実を行ったと認定されたとしても,将来,非行を繰り返すおそれがあり,保護処分等を行うことにより,将来の非行を防止できる可能性がなければ,保護処分に付することができないとされています。

 例えば,少年法19条1項は,「家庭裁判所は,調査の結果,審判に付することができず,又は審判に付するのが相当でないと認めるときは,審判を開始しない旨の決定をしなければならない。」と定めており,少年法23条2項は,「家庭裁判所は,審判の結果,保護処分に付することができず,又は保護処分に付する必要がないと認めるときは,その旨の決定をしなければならない。」と定めております。これらは,非行事実が認定されたとしても,要保護性がない場合には,審判不開始決定をしたり,不処分決定をしたりすることを定めているのです。

 要保護性は,単に,保護処分をするかどうかを決める要素となるだけでなく,どのような保護処分をするか決めるうえでも重要な要素となります。例えば,非行事実が軽微であっても,要保護性のうち上記①の要素が高い場合には,少年院送致のような思い保護処分に付されることもあります。

2 要保護性と環境調整

 少年事件においては,要保護性というファクターが,非常に重要になってきます。

 そのため,少年事件の付添人は,要保護性を解消(上記①を除去する)するための活動を行うことがあります。これを環境調整活動といいます。

 要するに,環境調整活動とは,少年が再非行をしないための活動ということができます。付添人が行う環境調整活動は,非常に多岐にわたります。

 以下はその一例です。

① 少年本人に内省を深めさせる活動
② 家族との折り合いが悪く,家庭に居場所がない場合には,家族関係の問題を解消するための活動
③ 学校側に在籍している少年の場合,今後も学校に在籍して,少年を受け入れてもらうための活動
④ 就業場所を確保するための活動

3 要保護性の審理の方法

 少年事件では,非行事実の重大性ではなく,少年の要保護性の有無,程度によって,少年に言い渡す処分が決定されることになります。

 成人の刑事事件の量刑では,「まず,犯行の動機,手段・方法,結果等の犯罪行為自体に関する要素(犯情)によって刑の大枠が定められたうえで,裁判所がその枠内で,一般予防や特別予防にかかわる犯情等からなる一般情状を考慮して,具体的な宣告刑を決定さするとされて」おります(少年法・川出敏裕 183頁)。すなわち,被告人が行った犯罪行為の重大性が決定的に重要な意味を持つことになります。この点は,少年事件と成人事件の大きな違いです。

 それでは,少年事件において,要保護性は,どのように認定をされていくのでしょうか。

(1) 調査官による調査

 少年の要保護性は,まず,裁判所の調査官による調査が行われて,その結果は,少年調査票という記録にまとめられることになります。裁判官は審判前に事前にその記録に目を通して,要保護性に対する心証をつくって審判に臨むことになります。
少年調査票は重要な資料になるので,付添人も,必ず,当該資料を読んで内容を分析したうえで,審理に臨むことになります。

(2)少年 審判期日における審理

 少年審判期日においては,まず,非行事実に関する審理を行い,非行事実が認められるということになった場合,引続き要保護性の審理も行われます。審理は,基本的に,裁判官が,少年に対して,非行の動機・経緯・原因,少年の生活状況,学校・職場での就学・就労状況,家庭環境等について質問をして,少年が,この質問に回答する形で行われます。
 そのあと,裁判官が,審判に出頭した少年の保護者に質問をしたり,付添人や調査官が,少年,保護者に質問をしたりすることになります。
 以上のような審理を経て,裁判官は,要保護性についての最終的な心証を確定して,それに基づき処分を言い渡すことになります。

★以下では,品川総合法律事務所の少年事件の処理方針等を説明しています。
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