少年事件における観護措置の期間(少年鑑別所に収容される期間)
観護措置の期間は「原則」2週間です。ただし,特に継続の必要がある場合,決定により1回更新(2週間を加算)することが可能とされています(少年法17条3項,4項本文)。実務上は,ほぼ間違いなく更新がされますので,観護措置の期間は基本的に4週間となります。少年事件の観護措置の期間は,成年の刑事事件における起訴後勾留(原則2か月で1か月ごとに更新でき,しかも,更新回数に制限がない。)と比較すると,相当短くなっているということができます。少年法は,長期間の身柄拘束が,少年の心身に悪影響を与えることに考慮したものです。
もっとも,少年事件における観護措置の場合にも一定の要件を満たせば,観護措置の期間の更新を,さら追加してもう2回行うことが認められます。要件は,①死刑,懲役,禁固に該当する罪の事件において,②その非行事実に認定に関して証人尋問,鑑定,検証を行うことを決定したもの,またはこれを行ったものについて,少年を収容しなければ審判に著しい支障が生じるおそれがあると認めるに足りる相当の理由があることです。この制度は,特別更新と呼ばれているもので,非行事実が激しく争われ,多数の証人を取り調べる必要がある事案において,4週間という期間内に証拠調べを実施することは困難ということから平成12年の改正法で採用されたものです。
近年では,複雑な事件について非行事実が激しく争われる事件が増加し,また,検察官関与事件の対象が拡大したこともあり,観護措置の特別更新がされる事例が増加しているといわれています。
しかしながら,一方で,安易な観護措置決定の特別更新がされる事例もあるといわれています。基本的には,付添人,検察官,裁判所が格段の努力をして,可能な限り,4週間以内に審理を遂げて,終局決定をすることを目指すべきです。その意味で,証人尋問等が実施されたから,特別更新をするのが当然であると考えるのは適切ではないと思います。もっとも,この点については, 付添人となる弁護士側の努力も欠かせないところだと思われ,少年の身体拘束を短くするという使命を強く思う必要があるかと思います。
一方で,成人の刑事事件においては,起訴後勾留期間に制限はないので,少年事件において8週間という観護措置の期間を設けること自体に無理があるとする見解もあります。「実際の特別更新事例の実情及びその検討結果・・・からも窺えるように家庭裁判所や関係者の運用上の努力には限界があり,観護措置期間(8週間)内に終局決定に至ることが困難な事例が生じることは避けられないこと・・・観護措置期間内に終局決定に至ったとしても,実際上の使用や不都合が生じうること・・・などから,更なる観護措置期間延長の手当ても検討すべきである。」としたうえで,さらに,次善の策として,「検察官送致決定の弾力的な活用」を提言する見解もあり(注釈少年法[第三版]田宮裕,廣瀬健二[編]),立法面,運用面のいずれからも注視が必要になるかと思われます。