警察学校相互連絡制度と少年事件について~非行や犯罪を学校に秘密にするということ~

2014-09-13

少年事件では,少年が非行や犯罪をして,警察から取調を受けている場合,警察が,少年の通学している学校に対して,連絡をすることを心配される方がいます。特に,学校に事件のことが知られておらず,もし知られてしまえば,退学等の処分が下される可能性が高い場合,状況により,できるだけ学校に知られることのないようにするべく対応していく必要があります。

警察から学校に事件の情報が伝わるルートとしては,「警察学校相互連絡制度」に基づく警察から学校への情報提供があります。
この制度は,児童生徒の非行や問題行動に対して,早期に発見,対応して,犯罪被害防止するために,都道府県の警察本部と教育委員会が協定を結び,警察と学校が相互に連絡を取り合うという制度です。

東京都教育委員会は,平成16年に警視庁とこの協定を結びました。その後,区市町村の教育員会も同じ内容の協定を結ぶようになり,私立学校の中にも警察と同じ内容の協定を結んでいるところがあります。

協定では,警察が,学校に対して,

① 逮捕事件

② ぐ犯事件

③ 非行少年等及び児童・生徒の被害に係る事案で警察署長が学校への連絡の必要性を認めた事件

について連絡をすることになっており,

学校は,警察署に対して,児童生徒の暴力行為等の非行問題,児童生徒が犯罪に巻き込まれたり,被害者となることを防ぐために,警察の協力が必要な場合等,その他,学校長が警察へ連絡することが特に必要と判断する場合等に連絡をすることになっています。

この制度によると,警察は,事前に少年や保護者に連絡をすることなく,学校に事件の情報を伝えてしまいますので,学校に事件のことが知られていない少年にとっては大きな脅威となります。警察の広範な裁量のもと,少年のプライバシー情報が学校に連絡をされる制度になっている点も問題だと思われます。

少年は,いろいろなところでつまずきながら成長していくものです。仮に,少年が非行を犯してしまった場合であっても,できる限り,適切な教育的働きかけをして,少年を正しい道を進ませることは,本来の学校の使命の筈です。「適切な教育的働きかけ」がどのような内容になるかは,ケースバイケースですが,当然,少年を安易に退学に追い込むものではなく,在学させたうえで指導するということになることも少なくないと思います。学校側が,事案に応じて,適切な判断をしてくれるのであれば,非行の事実を学校に隠す必要はなく,むしろ,学校側に積極的に伝えたうえで,一緒に今後のことを考えた方がよいということになります。しかしながら,実際には,非行をして逮捕されてしまうと,それだけで退学をさせようとする学校も少なくないのが現実です。このような現実を考慮しますと,学校に非行や逮捕の事実を知られないようにするという活動が必要になる場合もあります。学校を休む必要がある場合には,学校に対してどのように申告するかは問題となります。学校側で予想される対応や少年本人の気持ちを勘案して決めていくしかないと思います。

警察・学校相互連絡制度が導入されていても,警察は,対象となる事件全てを機械的に学校に連絡をしているわけではないとされています。そこで,学校への連絡を避けるべき事情がある場合には,弁護人は,早期に警察署に対して,警察・学校相互連絡制度に基づく連絡を避けるよう申し入れを行う活動をすることがあります。ただし,このような活動が功を奏するかは分かりません。私の経験上は,このような活動をしても,徒労に終わるという確率が少なくないと考えています。もっとも,教育委員会によっては,当該制度の運用についての指針を作成して,警察から受けた連絡内容だけを根拠として,少年に不利益な措置がとられないようにすることを定めているところもあるようです。実際に,当該制度により学校に対して連絡が避けられないという場合もありますので,その場合には,教育委員会の指針等も確認したうえで,学校と話し合いをする必要があるかと思われます。

なお,本協定は,警察署と各教育委員会を単位として締結されるものですので,例えば,埼玉県内の警察署が,東京都内の学校に上記事項の連絡をするということはないものと考えられます。

★以下では,品川総合法律事務所の少年事件の処理方針等を説明しています。
少年事件に強い弁護士

Copyright(c) 2014 品川総合法律事務所 All Rights Reserved.
【対応エリア】東京・神奈川・埼玉・千葉