少年事件の付添人とは?
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1 弁護人と付添人の違いは何?
「弁護人」と「付添人」はどこが違うのでしょうか。
少年事件では,少年が,家庭裁判所に送致されたあと,少年や保護者は,付添人を選任することができます。
少年事件において,家庭裁判所に送致される前の段階(捜査の段階)では,弁護人として選任することができますが,捜査段階の弁護人選任の効力は,家庭裁所送致時に失われます(最高裁判所昭和32年6月12日決定は,被疑者の弁護人として選任届が提出されていても,同事件が家庭裁判所に送致後,改めて付添人として選任しなければ,当該弁護人を当然に付添人ということはできないと判示しています。)。
成人の刑事事件では,起訴前に弁護人として選任された弁護人が,起訴後も当然に弁護人となります(刑事訴訟法17条)。
これが,成人事件と少年事件の違いの一つです。
2 だれが付添人になれるのか?
あるサスペンス小説で,少年が,弁護士にして,なかなか事件のことの話をしようとしないので,保護者が付添人になって真相解明に乗り出すというものがありました。
実際に,少年事件の付添人は,資格等に制限があるわけではなく,保護者もなることができます(少年法10条2項。ただ,弁護士以外のものがなる場合には,家庭裁判所の許可が必要となります(少年法10条1項))。
そのため,少年の保護者も家庭裁判所の許可を受けて付添人になることはできるのです。後記のとおり,少年の保護者ではできなくても,付添人であればできることもありますので,保護者が付添人になる意味が全くないわけではありません。
そういった意味で,保護者が付添人になるという小説のストーリーはなかなか考えられたものだと思いました。
ただし,付添人としての重要な責任を果たすためには,少年法に関する知識,少年の成長発達に関する知識等が必要になってくることが多く,弁護士が付添人になることが望ましいことは間違いないと思います。実際,付添人のほとんどが弁護士付添人で,その割合は90%を超えるといわれています(平成25年では,98.7%に達しているようです。)。
3 私選付添人と国選付添人
付添人は選任者によって私選付添人と国選付添人とに分かれます。私選付添人は,私人が選任した付添人,国選付添人は裁判所が選任した付添人です。
私選の付添人を選任することができるのは,少年と少年の保護者です(少年法10条1項)。少年は十分に判断能力がない場合もありますので,保護者は,少年の意思に反しても付添人を選任することができますし,また,少年は,保護者が選任した付添人を解任することもできないとされています。
一方,国選付添人が選任されるのは,以下の場合です。
パターン①
・検察官の関与の決定された,かつ,少年に弁護士である付添人がいない事件(少年法22条の3第1項)
パターン②
・故意の犯罪行為により被害者を死亡させた場合,死刑または無期もしくは長期2年以上の懲役懲役もしくは禁固にあたる罪の事件であって,
・少年に弁護士の付添人が選任されておらず,
・少年が少年鑑別所に収容されていて,
・しかも,家庭裁判所が弁護士である付添人を関与させることが適切であると判断した事件(少年法22条の3第2項)
パターン③
・被害者等による審判傍聴が実施される事件で少年に弁護士である付添人が付されていない事件(少年法22条の5第1項)
成人事件における国選弁護人は,選任される事件に限定はありませんが,少年事件は,以上のとおりかなり限定的な場合に,国選付添人が選任されるということになっています。
4 付添人の権限
付添人には,以下のような権限が認められています。
・審判への出席権(少年審判規則28条4項)
・記録及び証拠物の閲覧権(少年審判規則7条2項)
・少年鑑別所における収容中の少年との立会人なしの面会権(少年鑑別所法81条1項)
・少年に審判における証拠調べ手続における立会権と証人や鑑定人への尋問権(少年法14条2項,15条2項)
・審判での意見陳述権(少年審判規則30条)
・証拠調べの申出権(少年審判規則29条の3)
・保護処分決定に対する抗告権(少年法32条)
5 国選付添人と私選付添人はどちらがよいか。
よく法律相談で国選付添人と私選付添人のどちらがよいかということを聞かれます。
一概にどちらがよいかということは判断できません。
国選付添人のメリットは,国費で付添人を選任できることです。私選付添人のメリットは,自ら付添人を選任することができるということです。
一般の方の中には,国選付添人は,私選付添人より能力が低い,あるいは熱意がないと考えられている方もいます。
しかし,必ずしもそうとは言い切れません。国選付添人をやられている弁護士の中には,経験豊富で能力も高く,ほとばしる情熱を持っている方もいます。逆に,私選付添人をされている方の中にも,経験,能力がともに乏しく,情熱もいまいちという方もいます。要は,国選であるにせよ,私選であるにせよ,誰が付添人になるかということが重要です。
国選付添人に不安を持ったら,私選付添人を検討されるのも一考かと思われます。余談ですが,少年審判のときに,「少年院での保護観察が相当である」という意見を述べた国選付添人がいたと聞いたことがあります(例えるなら,「左に右折しろ!」ということを言っているようなものです。)。少しでも,不安を感じることがありましたら,御相談をいただければと思います。
6 付添人の役割
昔から付添人の役割については議論がされてきました。
成人の刑事処分は,加害者に対する制裁であって,加害者にとってもっぱら不利益処分であることに争いはありません。
一方,少年事件の保護処分(保護観察処分,少年院送致等)は,少年にとって専ら不利益な処分とまでは言い切れないものがあります。少年の手続は,少年の成長発達に有益な教育的な処分という側面が否定できません。
そのため,付添人には,少年の権利を擁護する弁護人的性格と家庭裁判所が手続を円滑にすすめるのに協力する家庭裁判所の協力者的性格を併せ持つとされています
付添人の性格のうちどちらの性格を強調するかは,いくつか具体的な場面で問題となることがあります。例えば,付添人が,少年の改善教育にとっての効果を考えずに,少年の要求に従い,ひたすらに軽い処分を求めることができるか,あるいは,少年が親から虐待を受けているという事実を付添人が把握したものの,少年も親もそれを隠すことを望んでいる場合,付添人がその事実を裁判所に伝えるべきかなどです。
私の考え方としては,付添人は,少年の権利を擁護する弁護人的性格を強調すべきことを基本としつつ,その中で,少年の成長発達権を充足させるような最善の処遇を実現すべきと考えています。また,単に,「少年の意思」ということから短絡的に判断をせずに,そもそも少年の意思表示が有効なものなのかを真摯に検討したり(例えば,上記の二つ目の例では,少年の意思表示自体が無効であると思われます。),「少年の意思」を実現することが少年の利益にかなわないと考えるときは少年の意思」自体を変化させることができないか,少年に向かい合って真摯に話し合いをする必要があると思います(究極的には,少年院送致という処分を受けることを納得させる必要がある場面もあるように思います。)。
★以下では,品川総合法律事務所の少年事件の処理方針等を説明しています。
少年事件に強い弁護士