少年事件の記録
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1 法律記録と社会記録
少年事件における記録は,法律記録(少年保護事件記録)と社会記録(調査記録)があります。
法律記録は,非行事実の存否を認定するための記録です。要するに,警察や検察から送られてくる,供述調書,実況見分調書等のことをいいます。
一方,社会記録は,家庭裁判所の送致後に作成される記録で,家庭裁判所の調査官が作成した調査結果や少年鑑別所の鑑別結果です。社会記録は,裁判官が,少年の要保護性の判断をする際に,重要な資料となります。
2 少年事件の記録の閲覧と謄写
少年事件の法律記録,社会記録を閲覧,謄写はどのような場合に認められているのでしょうか。
この点については,少年審判規則に規定があります。
少年審判規則第7条
① 保護事件の記録又は証拠物は,法第五条の二第一項の規定による場合又は当該記録若しくは証拠物の保管する裁判所の許可を受けた場合を除いては,閲覧又は謄写することができない。
② 付添人(法第六条の三の規定により選任された者を除く。以下同じ。)は,前項の規定にかかわらず,審判開始の決定があった後は,保護事件の記録又は証拠物を閲覧することができる。
要するに,原則として,少年事件の保護事件の記録は,裁判所の許可を受けた場合を除いては,閲覧,謄写することができないものの,付添人は審判開始決定後には法律記録の閲覧が可能になります(なお,被害者には,一定の範囲において,記録の閲覧,謄写をすることが認められていますが,波線部分は被害者の閲覧,謄写が認めている条項です。)。
一方,謄写については,付添人であっても,裁判所の許可を受けた場合に可能となります。
どのような範囲で謄写が認められるかという点については,法律で明確に規定されているわけではありません。
実務上は,法律記録については,個人情報等が記載された箇所について,マスキングがされるものの,それ以外の個所については謄写が可能となっています。一方,社会記録については,全ての個所について,謄写が認められないという扱いがされています。
もっとも,社会記録の謄写が認められないというのは,法律で規定されているわけではなく,あくまでも家庭裁判所の実務上の扱いに過ぎません。したがいまして,かつては,社会記録を徹底的に読み込んでこそ,付添人活動が充実するという信念のもとに,社会記録の謄写を認めていた裁判官もいたようです。ただ,現状では,社会記録の謄写が認められるのは,皆無といってもよいので,付添人は,必要な箇所をメモしてくる必要があります。
さらに,補足すると,メモを作成するにあたり,パソコンを使用することも,少なくとも,東京家庭裁判所においては認められていません(横浜家庭裁判所,千葉家庭裁判所等でも認められていないようです。)。裁判所としては,パソコンを使用してメモを作成するとなると,正確性や迅速性の観点から,謄写と変わらないと考えているようです。ただ,手書きのメモでも場合によっては,同じようなものを作成することが可能ですので,裁判所の考え方が,正しい考え方か疑問が残るものと思わざるをえないところがあることは事実です(パソコンの利用を認めてもらえるだけで,付添人の負担はかなり軽減されるのですが・・・。)。
3 少年事件の記録閲覧謄写のタイミング
法律記録は家庭裁判所に送致された段階ですべての資料がそろっています(もっとも,余罪事件や共犯事件の記録が追送というかたちで送られてくることも少なくありません。この場合,少年法規則第29条の5に基づき,家庭裁判所が,付添人に通知をすることになります。)。そこで,私の場合,法律記録は家庭裁判所に送致された後,すぐに,閲覧に行きます。そして,内容を確認した後,必要な箇所について,謄写の申請をするようにしています。
一方,社会記録は,家庭裁判所に送致されたあと,徐々に綴られていくものです。
身柄事件でいうと,少年審判期日の数日前に少年鑑別所が作成した鑑別結果通知書が綴られ,少年審判期日の2日から1日前に家庭裁判所の調査官が作成した調査票が綴られることになります。
したがって,少年事件を担当する場合,少年審判期日の数日前は比較的余裕をもった予定に調整しておくようにしています。
4 少年事件の記録と秘密保持
特に,社会記録は,重大プライバシーに関する情報が含まれていることもあり,例えば,少年自身が全く知らされていなかったような,家庭の秘密等に至る事情が記載されていることもあります。社会記録は,外に漏洩されないという前提で作成されていて,逆にいえば,そのような前提があるからこそ,貴重な情報が収集できるということがいえると思います。そのため,私としては,第三者に漏洩しないことはもちろん,少年,保護者にもみだりに内容を開陳しないようにしています。もっとも,社会記録の内容は,要保護性の解消のために有益な記載が多々含まれていることが多いので,必要に応じて,プライバシーの問題等が発生しない箇所を少年,保護者に伝えることはあります。
★以下では,品川総合法律事務所の少年事件の処理方針等を説明しています。
少年事件に強い弁護士