少年法の対象~何をしたら少年事件~

2016-01-01

1 少年ってなに?

 少年法は,「非行少年」を対象とする法律といわれています。それでは,「非行少年」とはどのような意味でしょうか。

 まず,「少年」は,少年法2条1項に定義が書かれています。いうまでもなく,少年=二十歳に満たない者です。
非行をした時点で,「少年」であっても,その後,成人すると,少年法の対象ではなくなります。19歳のときに窃盗を犯しても,20歳になると,少年審判で処分をすることはできなくなります。20歳になりそうな少年をどのように扱うかは 年齢切迫の少年事件の投稿を参照してください。

2 非行ってなに?

 一方,「非行」という言葉はやや注意が必要です。一般的に非行というと,タバコをすったり,飲酒をしたりすることも含みます。警察活動として行われる補導も,同様の行為の防止をも目的とするものです。
もっとも,少年法が対象としている「非行」は,より限定された意味で使われています。具体的には,少年法3条1項に該当する少年だけが「非行」少年ということになります。

 具体的には,以下のように記載されています。

少年法3条1項
1 罪を犯した少年
2 十四歳に満たないで刑罰法令に触れる行為をした少年
3 次に掲げる事由があって,その性格又は環境に照らして,将来,罪を犯し,または刑罰法令に触れる行為をする虞のある少年

イ 保護者の正当な監督に服しない性癖のあること
ロ 正当の理由がなく家庭に寄り附かないこと
ハ 犯罪性のある人若しくは不道徳な人と交際し,又はいかがわしい場所に出入りすること
二 自己又は他人の特性を害する行為をする性癖のあること

 以上のうち,1号は,犯罪少年といわれる類型です。犯罪をしてしまった少年がこれに該当します。

 2号は,触法少年といわれる類型です。刑罰法令に違反する行為をした14歳未満の少年がこれに該当します。犯罪=刑罰法令に違反する行為ではありません。14歳未満の少年が,刑罰法令に違反する行為をしたとしても,責任能力がないため,いかなる意味においても,犯罪とはなりません。逆にいえば,14歳未満の少年は,何をしても,犯罪をすることはできないことになります(少年法3条1項2号により,「非行」をしたとして,少年法の対象とはなります。)。
 3号は,虞犯少年といわれる類型で,上にかいたイ,ロ,ハのいずれかに該当し,将来,罪を犯し,または刑罰法令に触れる行為をするおそれのあることが要件となります。イ,ロ,ハ,二の事由があること(波線部分)を虞犯事由,将来刑罰法令に違反する行為をするおそれがあること(二重線部分)を,虞犯性といいます。

3 虞犯は特別?

    触法少年は,刑罰法令に違反することが要件となりますが,虞犯少年は,刑罰法令に違反することすらも要件とはなりません。刑罰法令に違反しなくても,少年法の対象とされているのです。少年法の理念が,単に過去の行為に応じて処罰を下すというものではなく,将来に向かって少年を教育して,再非行を防止するという点にあることが顕著にあらわれています。
 もっとも,虞犯は抽象的に記載されておりますので,将来犯罪をするおそれがある,という将来の予測が要件となっておりますので,非常に曖昧な概念であることは事実です。反抗期の少年であれば,「保護者の正当な監督」を拒絶しがちな場合も少なくないかと思います。そのような監督を拒絶しがちな少年は,将来犯罪をする虞がある!と簡単に認定されてしまうと,あまりに広い範囲の少年が虞犯ということになってしまいます。

そこで,虞犯性を認定するためには,慎重な判断が必要です。虞犯性は,少年の性格や環境に照らし,将来罪を犯しまたは刑罰法令に触れる行為をする危険が,ある程度具体的に予測されるものであることが必要となります(名古屋高等裁判所決定昭和46年10月27日家月24巻6号66頁等を参照)。実務上は,虞犯事由以外の様々な事情を考慮して,虞犯性を判断することが多いと思います。
 虞犯については,いろいろと問題があるところですので,少年事件と虞犯事件についてでまとめています。

 一つ虞犯少年に関して面白い審判例を紹介します。東京家庭裁判所平成27年6月26日の審判は,現金受取型特殊詐欺の実行行為の一部(いわゆる受け子)に関与したこと等を内容とする虞犯を認定して,少年を第一種少年院に送致しました。もともと,少年は,詐欺罪で逮捕されたものの,家庭裁判所に送致する段階で,少年の犯罪に関与していることの故意が明確でなかったため,虞犯として送致をされたものと考えられます。結局,証拠上,犯罪少年として認定することが困難だったため,犯罪をしていなくても認定できる虞犯少年として送致された事案で,実務上もあまりみない類型のように思います。

★以下では,品川総合法律事務所の少年事件の処理方針等を説明しています。
   少年事件に強い弁護士

Copyright(c) 2014 品川総合法律事務所 All Rights Reserved.
【対応エリア】東京・神奈川・埼玉・千葉