親子関係の不存在の争い方

2014-01-19

最近元アイドルグループのメンバーの親子関係をめぐる争いが話題となっています。親子関係をめぐる争いは,ほとんどの場合父子関係の有無についての争いです。

一般の方に知られていないのは,父子関係の争い方です。

たとえば,巷間を賑わしているアイドルグループと同じような事例で考えてみたいと思います。

・男性A Cの戸籍上の父親,Bの元夫

・女性B Cの母親,Aの元妻

・子C

とします。AとBは離婚しています。このような状況で,Aが,Cと血縁関係がないことを確信するに至った場合,どのような手段をとることができるでしょうか[1]。どういう方法で戸籍を修正することができるでしょうか。

まず,Aとして考えるのは,BやCと交渉して,AC間に親子関係がないことを認めてもらうことだと思います。

しかし,仮に,AとBやCとの間で,AC間に生物学的な親子関係がないという合意をしたとしても,それだけでACの親子関係が記載された戸籍を修正できるわけではありません。

A,BC間に争いがある場合はもちろん,争いがない場合も,Aは,親子関係が不存在であることの確認を求める家事調停を申し立てる必要があります。親子関係不存在,認知請求,離婚など人事に関する問題については,いきなり訴訟を提起することはできず,まずは,家事調停を申立てなければなりません(これを調停前置主義といいます。家事事件手続法257条)。

さらに,この調停で,3者が合意したとしても,それだけで直ちに,調停が成立するわけではありません。例えば,離婚調停の場合には,妻と夫が合意をすれば調停が成立となって,離婚ということになりますが,親子関係不存在の確認を求める調停の場合は異なるのです。

このような調停の場合には,いわゆる277条審判という手続をとる必要があります。

家事事件手続法277条

親子関係不存在確認の訴えについて・・・家庭裁判所は,必要な事項を調査した上,第1号の合意を正当と認めるときは,当該合意に相当する審判・・・をすることができる。

1 当事者間に申立ての趣旨のとおりの審判を受けることについて合意が成立したとき

2 ・・・

要は,当事者間でA,Cに親子関係が存在しないことについて合意をしているような場合,家庭裁判所が,「必要な事項を調査」して,合意に誤りがないと認めることができれば,親子関係が存在しないという審判を下すということです。当事者が合意したからと言って,裁判所がその合意が誤りであると判断した場合には,277条の審判をすることはできません。身分関係は,できるだけ真実に合致している必要がある,当事者が自由勝手に決めてはいけない,という考え方が背景にあります。

「必要な事項を調査」する方法として分かりやすいのは,DNA鑑定です。ただし,277条審判をするために,必ずしも,DNA鑑定が必要なわけではありません。妊娠した時の状況や経緯等が明確になっていて,それを示す資料等がそろっていれば,DNA鑑定をせずに第1回の期日で事件を終了させることもあります。逆にいえば,当事者間に争いがない場合には,第1回の期日の前に準備を尽くしていれば,DNA鑑定等を行わず,調停をすぐに終了させることができるのです。第1回の期日に至るまでの準備が重要になります。

一方調停で合意が成立しない場合,あるいは,合意が正当と認められない場合には,調停は終了となります。このような場合には,Aは,親子関係不存在確認の訴えを家庭裁判所に提起することになります。親子関係の存否に争いがある場合には,調停や訴訟でDNA鑑定が行われるのが一般的です。DNA鑑定の費用は十万円くらいです。

 


[1] なお,Cはいわゆる「推定されない嫡出子」とします。「推定されない嫡出子」とは,婚姻成立後200日以内の出生子をいいます。「推定される嫡出子」だと手続が異なります

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