触法少年事件と一時保護
以前,触法事件の難しさについて簡単に説明しました。
触法事件が難しいのは,児童相談所の所長が事実上極めて大きな権限を持っていて,付添人がそのような権限を制御していく手段が乏しいからです(そもそも,付添人が,警察官の調査に関する活動を超えて,児童相談所の処遇決定に関して活動することができるかという点すらも問題とされています。)。
例えば,身柄を拘束されている触法少年の事件について,早期の身柄解放を目指して活動をすることがあります。ただ,犯罪少年等の場合にはない難しさがあり,どのように対応すべきかいつも苦悶しています。
触法少年を逮捕,勾留することはできません。もっとも,児童相談所の判断により一時保護をすることができます。一時保護は,児童相談所所長が必要であると認めるときに,少年を一時保護所に入所等をさせる行政処分です。一時保護の期間は,2ヶ月を超えてはいけないとされていますが,必要があると認めるときは延長も可能です(児童福祉法33条3項)。
問題は,「一時保護」が認められる要件が,法律上も運用上もあまり明確になっていないことです。児童相談所所長は,「必要がある」と認めるときは,一時保護をすることができるとだけ規定されています。また,手続的にも,児童相談所所長が「必要がある」と認められば一時保護の措置がとられ,裁判所等が事前に上記要件の有無を審査することもありません。さらに,一事保護がされた後に,一時保護が違法であると争う場合,行政不服審査法に基づく審査請求という手段が用意されていますが,当該審査請求に必要となる時間等を考えると,実効性のある手段とはいえません。
犯罪少年を身柄拘束する手段としては,成人の刑事事件と同じく,逮捕,勾留があります。逮捕,勾留は,罪証隠滅,逃亡のおそれがあることが要件とされており,要件自体は明確です。また,手続的にも,事前に裁判所の令状を得ておく必要がありますし,事後的にも,(勾留については)準抗告という手段で争うことができます。準抗告をすれば,1日,2日で結果がでます。
私自身,犯罪少年の事件であれば,勾留されず1日で釈放されることが強く予測されるにもかかわらず,触法少年であるばかりに比較的長期間の身柄拘束をされてしまうという事案に当たったこともあります。
もともと,「一時保護」は,虐待等から子どもを保護するための制度ですので,制度論の観点からすると,触法少年について「一時保護」の制度を利用して身柄拘束できるようにするのは望ましいとは思いませんが,現状では,「一時保護」という制度の枠組みの中で最善の方策を考えていくしかありません。
私としては,児童相談所の考えていること,懸念していること,対応してほしいと思っているところを推察して,改善策を保護者と考えて,児童相談所と交渉にあたることをしています。児童相談所としても,基本的には,何の理由もなく,一時保護をするようなことはないと思われますので,必要以上に敵対的にならず,児童相談所とある意味協力関係,信頼関係を気付いていけるかがポイントになるかと思っています。
なお,一時保護は一時保護所を利用することが原則ですが,警察署が一時保護の委託先になることもあります。ただ,そのような一時保護を行うことができるのは,児童相談所が児童を直ちに引き取ることが不可能であるような場合に限定され,さらに,やむを得ない事情がない限り,期間は24時間を超えてはならないとされています。
★以下では,品川総合法律事務所の少年事件の処理方針等を説明しています。
少年事件に強い弁護士