解雇に関する労働問題
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〜労働者側の立場から〜不当解雇された場合の対応
解雇とは
解雇とは,使用者による一方的な労働契約の解約です。
労働者の承諾が必要ないということが特徴です。
解雇の種類には,懲戒解雇,普通解雇,整理解雇があります。
解雇の種類に応じて,解雇が認められる要件は異なりますが,いずれにせよ,現在の日本の労働法制上,解雇ができる場合は,厳しく制限されています。
もっとも,特に中小企業等では,要件を満たさないような不当解雇が行われているのに,従業員が泣き寝入りしてしまうということが頻繁に起こります。
不当解雇を争った場合に,どのくらいのメリット,デメリットがあるのかは事案によって異なります。
そこで,そのようなメリット,デメリットを十分に認識したうえで,対応を決定する必要があります。
早期対応の必要性
使用者は,解雇をしたいと考える従業員がいたとしても,直ちに解雇をするのではなく,合法違法を問わず退職勧奨をして合意退職に追い込むことを目指す事案が少なくありません。
使用者も解雇の要件の厳格性を認識していることが多いので,軽々に解雇をすることを避ける傾向が強いのです。
解雇前に使用者からいろいろな指示が出されたり,担当者と面談を重ねたりすることがありますが,そこでの対応が解雇を争う場合に重要となることがあります。
退職勧奨を受けるようになった時点から,解雇されることになった場合を見据えて行動する必要があるのです。
そこで,解雇事案では早期対応が必要であると考えられます。
不当解雇の争い方
不当解雇を争う場合,示談交渉を行ったり,労働局・労政事務所等自治体のあっせんを利用したりすることが考えられますが,それでも解決できない場合,あるいは解決できないと見込まれる場合には,裁判手続の利用を視野に入れるべきです。
具体的に,裁判手続きとしては,訴訟の提起,仮処分の申立,労働審判の申立があります。
<訴訟の提起について>
訴訟を提起する場合には,いろいろな内容の訴えが考えられますが,一般的には,解雇が無効であることを前提として労働契約上の従業員としての地位を有していることの確認,及び解雇されて以降の賃金請求をしていくことが多いと思われます。
<仮処分の申立>
不当解雇の事案では訴訟を提起して争うとなると,時間がかかってしまい,不当解雇された従業員に重大な不利益が発生する場合があります。
具体的には,給料をもらえないと生活が非常に厳しくなる場合,社宅や住み込みの場合で住居確保の必要性がある場合などが挙げられます。
このような場合には,仮処分という制度を利用することを検討すべきです。
仮処分とは,訴訟での結論が出るまでの暫定的な措置を定める手続です。
仮処分が認められれば,一時的に,従業員としての地位があることを裁判所に確認してもらったり,一時的に,賃金の支払いを受けたりすることができるようになります。
<労働審判制度について>
労働審判の場合も,訴訟の場合と同じく,従業員であることの地位を確認することや賃料の支払を求めることになります。
労働審判の場合には,3回以内の期日で審理が集結するので,迅速な解決が期待できるというメリットがあります。
もっとも,審判に対して異議が出された場合には,結局,紛争解決には至らず訴訟になってしまい,かえって時間がかかってしまうというデメリットもあります。
〜使用側の立場から〜
現在の日本の労働法制上,解雇ができる場合は,厳しく制限されています。
特に,懲戒解雇は,相当な事由がなければ,不当解雇として解雇が無効になってしまいます。
解雇が無効になった場合には,労働契約が継続していることとなり,過去にさかのぼって,賃金の支払い義務が発生することになります。
辞めさせたい従業員を辞めさせることができないだけでなく,賃金まで支払わなくてはならなくなるのです。
このようなことにならないためにも,解雇をする場合には,相当綿密な下準備をして,不当解雇に該当しないような状況のもと,十分な証拠を残しておく必要があります。
また,あえて,解雇をしなくても,退職勧奨を行い合意退職に持っていけるような場合もあるかと思います。
そこで,辞めさせたい従業員がいるのであれば,早めに専門家に相談されることをおすすめします。