遺言・相続のトラブル事例

遺言・相続のトラブル事例

特別縁故者の申立

問題

私が2歳のころに,両親は離婚し,父親が私を引き取りました。

父は,すぐに新しい女性と交際をするようになり,この女性と結婚しました。 それ以降,私,父,継母の三人で楽しく生活していました。 私は,この継母を実母だと信じていました。

私が,30歳のときに,父が亡くなり,すぐに後を追うようにして,継母も死亡しました。 継母が死亡して,戸籍を見て,初めて,私と継母は親子の関係にないことを知りました。 (養子縁組もなされていませんでした。)

継母は,突然亡くなりましたので,遺言も作成しておりません。 継母の法定相続人は既に他界しています。   このような場合,私は,継母の財産を取得できないのでしょうか。

解説

〜法定相続人がいないとどうなるか〜 法定相続人は,妻,子,両親,親なので,連れ子は,再婚相手と養子縁組をしない限り,再婚相手の法定相続人とはなりません。

したがって,相談者は,継母の相続人とはなりません。   相続人不在の場合には,利害関係者等の請求により,相続財産管理人が選任され,債権者に対する弁済等が行われます。 残余財産については国庫に帰属するのが原則です。

〜特別縁故者の申立〜 もっとも,民法では特別縁故者という制度が用意されています。 すなわち,被相続人と生計を同じくしていた場合,被相続人の療養看護に努めた場合など,被相続人と特別の関係にあった場合は,相続財産の全部または一部を分け与えることができるとされています。

特別縁故者の申立をするためには,まず,相続財産の管理人を選任して,財産の換価や債権者に対する弁済を行う必要があります。 そして,その後に,特別縁故者の申立をすることになります。

死期が迫ったときの遺言

問題

病気などで死期が迫っている人が遺言をする方法としてはどのような方法があるでしょうか。

解説

~自筆証書遺言,公正証書遺言を作成することができない場合がある〜
まずは,自筆証書遺言,公正証書遺言を作成することが考えられます。
ただ,場合によっては,自筆証書遺言,公正証書遺言を作成することができないこともあります。

自筆証書遺言は,遺言者が,遺言全文,日付,氏名を自書する必要があります。
しかしながら.死期が迫っている場合には,意識が明瞭であっても,字を書くことが困難な場合もあり,そのような場合には,自筆証書遺言を作成することはできません。

公正証書遺言を作成する場合には,証人二人以上の立ち会いのもと,公証人が筆記したり,署名,押印をしたりする必要があります。
公正証書遺言を作成する場合には,公証役場に行って作成する方法だけでなく,公証人が遺言者の住居等に出張して,公正証書遺言を作成する方法もあります。
(もちろん,費用が掛かります。)

そこで,公証人に出張してもらい,公正証書遺言を作成することが選択肢として考えられます。
もっとも,この方法をとる場合,公証人に出張してもらう日時等を予め打合せをする必要があります。
場合によっては,遺言者の死期が眼下に迫っており,日程調整をしているような時間すらもないことも考えられます。
このような場合には,この公正証書遺言の作成という方法もとることができません。

〜死亡危急時遺言〜
法は死亡危急時遺言という特別の遺言を用意しています(民法967条)
作成の要件,手続は以下のとおりです。

① 遺言者に死亡の危機が迫っていることが必要
② 証人3人以上を用意する。
③ 遺言者が証人の一人に遺言を口頭で伝える。
④ 遺言の内容を伝えられた証人が,筆記し,遺言者や他の証人に読み聞かせ,または閲覧させる。
⑤ 各証人が筆記の正確なことを承認した場合には,署名,押印する。

遺言者は,口頭で遺言の内容を伝えることができれば,この方法による遺言を作成することができるので,文字を書くことができなくても問題ありません。

また,証人3人を用意することができれば,公証人を用意する必要はありません。

したがって,自筆証書,公正証書遺言を作成することができないような場合であっても,この方法による遺言を作成する余地はあります。

広大地とは〜相続税の更正の請求〜

問題

私の父が死亡し,私が唯一の相続人です。

父は,23区内に800㎡の土地(駐車場)を所有しており,この土地が相続財産です。
相続税路線価に面積を乗じた金額で,土地の価額を算定し,相続税の申告を行いました。

その後,私はこの土地を売却しようとして,地場の不動産業者の人に相談をしたところ,この土地にはマンションを建築することができないので,戸別分譲を前提として業者に売却するしかなく,そうすると,売却価格は路線価よりずっと低くなるというような説明を受けました。

このような場合,土地の評価額はもっと低かったということで,相続税は戻ってこないのでしょうか。

解説

この土地が広大地に該当するのであれば,相続税の更正の請求をして,一定の割合で減額した土地の評価額を前提として相続税の計算をやり直して,払いすぎていた分の相続税の還付を受けることができる可能性があります。

広大地とは,その地域における標準的な宅地の地積に比して,著しく地積が広大な宅地で,分譲をしようとした場合に,都市計画法に従って,道路等を設ける必要がある土地のことをいいます。
土地を分譲する場合,分譲後の土地が道路に接している必要があります。

そこで,広い土地を分譲するとなると,既存の道路に接することができない土地がでてきて,当該土地の一部を道路として使用することが必要となります。
道路部分は,土地の売買を行う上で,値段がつかないものとされてしまいますので,財産評価上,このことを考慮する必要があるのです。

広大地と認定されると,路線価額に,所定の補正率を乗じた金額で評価し,相続税を算定することになります。

 

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