国選弁護人と私選弁護人違い
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国選弁護人と私選弁護人について
国選弁護人とは,被疑者,被告人が貧困等の理由により自ら弁護人を選任することができない,あるいは選任をする意思がない場合に,裁判所が選任する弁護人です。
ただし,被疑者段階では(起訴される前の段階では),一定の重大犯罪(法定刑が死刑または無期もしくは長期3年を超える懲役もしくは禁錮にあたる)事件に限り,国選弁護人が選任されます。
私選弁護人は,被疑者,被告人が自分で選任する弁護人です。
国選弁護人と私選弁護人のメリット,デメリット
☆弁護士を選べるか,選べないか
「国選弁護人は報酬が安いため熱心な弁護活動をしない」
「国選弁護人は能力的に未熟な弁護士が多い」
という俗説をよく聞きます。
しかし,このような表現は,不正確でミスリーディングだと思います。
国選弁護人の中には,情熱をもって弁護活動を行い,同業者の目から見ても極めて質の高い弁護活動をされているような弁護士も少なくありません。
国選弁護人が一律に,不熱心,能力が低いという考え方は誤りだと思われます。
逆に,私選弁護人だから熱心に弁護活動をしてくれる,能力的に優れているということもないと思います。
国選弁護人のデメリットは,弁護人を選ぶことができないという点にあると考えています。
簡単に東京における国選弁護人の割り当てについて説明しますと,国選弁護人に選任されることを希望する弁護士は,予め国選弁護人名簿に登録をして,登録された弁護人に担当日が割り当てられます。
担当日の事件が機械的に弁護士に配点されることになっています。
国選弁護人の名簿に登録されている弁護士の中には,刑事弁護を熱心に行われている方も多数含まれます。
ただし,逆にいえば,国選弁護人の名簿には,刑事弁護を熱心に行わない,あるいは,能力的に必ずしも十分でない弁護人も含まれています。
国選弁護人のデメリットは,弁護士の選択を自分で行うことができず,そのような弁護士が選任されてしまう可能性があるという点だと思います。
国選弁護人が信頼できない,弁護してもらいたい弁護士がいる,信頼できる弁護士を探したいというような希望を持っている場合には,私選弁護人を選任すべきであるといえます。
☆費用の問題
「国選弁護人は国が全額費用を支払ってくれるから,無料で弁護士をつけられる」
という俗説もよく聞きますが,これもミスリーディングです。
資力のある被告人等には,国選弁護人に支払われた報酬について,「訴訟費用」として判決により負担が命じられることもあります。
一般的には,被告人には十分な資力がないことが多く,国が費用を負担することになるのが通常なのですが,資力がある被告人であれば,弁護費用を支払う必要があります。
もっとも,国選弁護人の報酬基準は,私選弁護人の一般的な報酬基準に比べて,かなり安めに設定されておりますので,国選弁護人のほうが私選弁護人に比べて負担が軽くなるということは間違いありません。
☆選任時期の問題
国選弁護人と私選弁護人の重要な違いは選任時期です。
私選弁護人はいつでも選任することがきます。
一方,国選弁護人の選任時期は,勾留決定が出された後です。
勾留決定が出るのは,逮捕された日の翌日かあるいは翌々日になるのが通常です。
そこで,私選弁護人を選任しなければ,逮捕されてから国選弁護人が選任されるまで空白の1日(あるいは2日)が出来てしまい,その期間に弁護活動をすることができなくなります。
厄介なのは,逮捕直後の数日間は,極めて重要な意味を持つという点です。
そもそも,勾留決定を防ぐための弁護活動は,検察官が勾留請求をする前,あるいは裁判官が勾留決定をする前に行う必要があります。
国選弁護人ですとこのような活動をすることができないということになってしまいます。
したがいまして,早期の身柄の解放を希望される場合には,私選弁護人を選任されることをお勧めします。