相続の手順(遺言がある方,無い方)
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遺言を探す方法
遺言があるかどうかで,相続に関する諸手続は大きく異なります。
そこで,相続が発生した場合には,まず,遺言があるかどうかを確認,調査する必要があります。
自筆証書遺言を作成した場合には,周囲の親族や弁護士,税理士等の専門家に預けていることが多いと思います。
また,銀行の貸金庫に預けていることもあります。
一方,公正証書遺言を作成すると,遺言の正本,謄本は遺言者に交付され,原本は交渉役場に保管されます。
公正証書遺言が作成されたかどうかは,公証人連合会の遺言検索システムを利用すれば分かります。
(ただし,古い時代に作成されたものは検索できません。)
遺言を隠匿した場合には,相続人の地位を失うこともあるので注意が必要です。
遺言の検認の手続
公正証書遺言の場合を除き,遺言の保有者は,相続開始後遅滞なく,家庭裁判所に検認の請求をする必要があります。
(民法1004条1項,2項)
検認の手続は,相続人に対し,遺言の存在や内容を伝えるとともに,遺言執行前に遺言書の内容を保全し,後日変造されたり,隠匿されたりすることを防ぐために行う手続です。
検認の手続をしたからといって,遺言が有効であることが確定するわけではありません。
遺言の執行について
遺言がある場合には,原則として,遺言の内容どおりに,遺産が分けられていくことになります。
遺言で遺言執行者が定められていたり,あるいは家庭裁判所が遺言執行者を選任したりした場合には,当該遺言執行者が,遺言の内容どおりに遺産を分けていくことになります。
相続人の確定
遺言がない場合には,相続人全員で遺産分割協議をする必要がありますので,相続人を確定する必要があります。
また,遺言がある場合であっても,遺留分の問題等があり,相続人を確定する必要がある場合が多いと思われます。
被相続人と婚姻関係にある配偶者は常に相続人となります。
配偶者以下の親族は以下の順位で相続人となります。
第1順位 子
第2順位 直系尊属
第3順位 兄弟姉妹
遺留分について
遺言がある場合でも,一定の法定相続人は,遺産のうち一定の割合を承継することが法律で保障されています。
これが遺留分の制度です。
遺留分の権利があるのは,被相続人の配偶者,子,直系尊属です。
一方,兄弟姉妹には,遺留分がありません。
(民法1028条)
遺留分の割合は,直系尊属だけが相続人出る場合には3分の1,それ以外の場合には,2分の1となります。
例えば,Xさんが被相続人,相続人はXの実父Y,実母Zの2名,相続財産が120万円である場合,Y,Zの遺留分はいずれも20万円(120×1/3×1/2),となります。
一方,Xさんが相続人,相続人は配偶者Y,長男Z,次男T,相続財産が120万円である場合,Yの遺留分は30万円(120×1/2×1/2),Z,Tの遺留分は,それぞれ15万円(120×1/2×1/4)となります。
遺留分をめぐる問題は非常に複雑で,いくつもの論点について,法律家でも難解な議論がなされています。
遺言の無効確認訴訟
遺言の無効を主張して,遺言無効を確認する訴訟が提起されることもあります。
遺産分割協議
遺言がない場合には,全相続人との間で,遺産分割協議を成立させる必要があります。